クマゼミの羽化
一昨日のこと、夕方会社で同僚がセミの幼虫を見つけて、僕にくれました。それも、土からはいだして歩いていたとのこと。セミの幼虫は長い間土の中にいて、羽化するときに地上に出てくるはずだから、これは今晩にでも羽化するのでは?ということで、子供がいる僕がそいつを持って帰って観察することになりました。
簡単な箱に入れて家に連れて帰りましたが、ガサゴソガサゴソまーよく動き回ること。家に帰って箱から出したら、またよく歩き回ります。
セミが羽化するといったら木の幹なんだろうなあーと思ったけれど、マンションの我が家にはもちろん木などありません。折角だから羽化するところを観察したいし・・・そこで、汚くて恐縮ですが空いている虫かごに、足がかりになるものをということで紙をクシャッと丸めて入れてやりました。
しばらくの間は、紙も気に入らない様子でプラスチックのかごの壁にゴツンゴツンやっていて、これはちゃんと羽化してくれるんだろうかと思いましたが、まあしばらくは動き回って、夜中に落ち着いて未明に羽化するのだろう、ということでそのまましばらく放っておきました。
夜11時頃に、そろそろ羽化場所を見つけて落ち着いてくれたかなと思い見てみると...
アレ?もう羽化を始めている!セミは夜明け前か早朝に羽化するのだろうと思い込んでいたのですが、実は夜のうちに羽化して、朝までの間は羽が固まるまでじっとしているのだそうです。
さっきの写真から8分ほど経ったところ。8割がた出てきました。緑と肌色のクシャクシャとしたものは、羽のようです。
反対から見たところ。「流氷の天使」クリオネみたいなポーズです。
15分ほど経ったところ。もう一息です。羽も少し広がってきました。横から見ると顔がパンダみたい。
ズルッと抜けて、羽化成功です。
羽化直後ですが、自分の脚でしっかりしがみついています。どことなく必死にしがみついているようなその様子は、生まれたての動物の赤ちゃんのよう。つかまっているところがクシャクシャの紙、というのが申し訳ないところですが...
羽もだいぶん伸びてきました。
生まれたての体の色は白っぽいです。羽は透明ときれいな緑色。
ここまで見届けたので、とりあえずお休みにします。一応翌朝子供に見せたいので、ふたをしておきました。
翌朝。おとなしく紙にしがみついていますが、顔や体の色は黒くなり、羽の縁取りの緑色も鮮やかさを失って、すっかり普通のクマゼミになってしまいました。もう一人前なんでしょうね。
しかし、ふたを開けてもじっと動かない。死んでいるわけじゃないので一安心ですが、すぐにでも飛んでいくかと思ったらそうでもない。見てみると、右の羽がちょっと変形しているようです。狭いかごの中で羽化した後、かごの壁にでもすれて、うまく伸びなかったのかなあ?それとも先天性のものなのかなあ?
この後、一日ふたを開けておいたのですが、飛ぶことができず、鳴くこともなく、ただガサゴソと動き回っては落ちてひっくり返り、の繰り返しだったようです。飛べないセミになってしまったのか...だとしたらかわいそうなことをしたなあ。
このままかごで一生を終えるのはかわいそうなので、飛べるにせよ飛べないにせよ、今よりは居心地のいいであろう木の幹に返してやることにしました。その日の夜、一家でマンションの前の木の幹に連れて行き、つかまらせてやりました。広々とした木の幹につかまり、これで少しは幸せになってくれたかなあ。しばらく見ていてもポトリと落ちることもなく、しっかり木の肌をつかんでいました。
翌日その木を見てみましたが、彼はもうどこにもいない。はたして飛ぶことができたのか、木の幹を上へ上へとひたすら上り続けたのか、地面に落ちた後どこか別のところに行ったのか、はたまた鳥のえさになったのか、結末は知る由もありませんが、少し思いを巡らせてみた夏の一日でした。
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